大阪のひとり出版社「つむぐ舎」ができるまで②
どうして関西には出版社が少ないのか? ②
ということで関西で振り出しに戻った私は、育児をしながらフリーのライターとして再出発します。
けれど、昔より広告の仕事は減っているわ、20代の頃よりキャリアだけは増えて不満は言うわで、ますます仕事は先細り。
そしてようやく、自費出版がメインの単行本書籍編集部に入れていただくことになるのです。
お金をもらって本を作るということ
その会社は、自費出版とはいえ、ISBNコードを入れ、新刊委託までできるのが一つのウリでした。
本を作るだけでなく、完成した後のマスコミ献本や、注文チラシやPOPまで作成。
それでいて、東京などの大手自費出版会社の半額、ヘタをすれば3分の1程度の良心的な金額で請け負っていました。
自費出版とはいえ、いや、自費出版だから?な面白い原稿が多くありました。
相談いただくと毎回、「こんな本にすれば、興味のある読者がいるはず」と思い、いろんなタイプの書籍を作らせていただきました。一般流通の本と遜色ない本に仕上げ、新聞各社やラジオなど、メディアにも多く取り上げていただきました。
何より、著者には感謝されるし、自分の懐をいためずに、市場で勝負する本をつくれるのです。
天職だとさえ思いました。
ただ、やはり自社の企画で勝負したいという思いがあったのは確かです。
企画出版(出版社が費用を出す普通のカタチ)も数冊担当させてもらい、多くのメディアにも取り上げてもらってその会社ではそこそこ売れましたが、もっと自社企画の書籍を出版していきたかった。
そして「自費出版」を行っている会社が、企画で勝負することに二の足を踏むことも理解できました。
そりゃ、そうですよね。
ただでさえ本が売れない時代に、必要としている読者に届く本を企画出版し、ビジネスとして成立させていくことは本当に大変なことなので。印刷・製本代や装丁・DTP代…おまけに入ってくるお金は6掛けです。
だから企画出版であっても、著者が講演会で販売できるなどの部数を見込んだり、買い切りの提案がされる場合もあるのですが、こうしたことから、今は企画出版と自費出版に対する考え方についても、もはやきれいに区分されていないんじゃないかなと個人的には思っています。
ここでようやく「どうして関西に出版社が少ないのか?」というお題にたどり着くのですが(やっとかいッ!)、個人的には、「文化」や「志」なんかより、やっぱり「ゼニや!」な大阪という街の風土というか、土壌があるんじゃないかなあ、なんて思ったりしています。
(引っ張った割には、それぐらいの結論かい、という感じですが…スミマセン)
関西に出版社が少ない理由▶▶▶
・文化より、やっぱり経済! 儲けを優先する経営者様が多い。
・そもそも出版業自体が、東京の地場産業。
結局、その会社を退社し、その後に入社した会社も、企業からお金をもらって「社史」をつくる会社でした。
そもそも出版社の数自体がない関西において、「後世にのこるような絵本をつくりたいんですッ!」などというオールドルーキーを雇ってくれる会社には巡り合えないのでした。トホホ。
「金」にならないことは、やらないのが大阪人!
そうでなくっちゃ。「志」で飯は食えないもの。
魅力的なひとり出版社さんの背中を追って
その後、「これからはWEBの時代や!」と、企業のHP制作事業部に入ってWEB制作を少しだけかじったりしつつ、「これからどうして生きていこうか」と考えたとき、それまでも何度か考えていた「独立」をするタイミングは、今しかないのではと思いました。
それには、魅力的なひとり出版社さんがいくつも誕生している状況がありました。
また、SNSなどを活用して、一種の起業ブームが起こっていることも感じていました。
私よりも経験のない若い人たちが、思い切りよくどんどん、自分のやりたいことをと羽ばたいているのに、業界の片隅で長く生きてきた人間が、いつまで同じところでブツブツ言ってるんだよ。
また新しい会社に入ったとしても、結局、同じことを繰り返すだけなんじゃないのか?
本当にやりたいことに、チャレンジするべきではないのか?
そんな時に、たまたまドラマを見ていたときに、古田新太が言ったセリフ。
ボクたちの仕事は、「向いている」「向いてない」じゃない。
—―テレビドラマ『SUPER RICHI』のセリフより
「やるか、やらないか」です。
そしてお馴染み、インディード。
「えいやッ! 大事ですね」「えいやッ! 大事です」
――indeed求人CMより
そう、お察しのとおり、情報が古いですよね。その「えいやッ!」が2年前になります。
ところが、そんなに簡単に前に進みはしなかったのです…。 <つづく>
このコラム、長すぎない?
たぶん、今回で終わりかな…